イン・ブルーム(30首)

イン・ブルーム

 


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記憶には残らないから傷痕のようにあなたを思うよ 四月

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花盛り いまいちばんの潮時に光り損ねたひとりとひとり


こんなにもわかりあっても足りなくて去来するのは火に似た季節


目の中の光と思った それを見て恋人とする予行練習


感性が擦り切れるまでは逃避行前夜の気持ちで生きていられる


闇の恋 手癖の悪い天使たち 意味と形を授かり合った


僕にだけ見える幽霊 正体を告げても花瓶は意思を保って


流れても流れなくてもいいスポンジの泡に映って無数の私


カフェインを切らさないという口実に シュガー星座のように並んだ


僕を撃て痙攣させた音楽で ありとあらゆる眩しさのなか


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北向きの窓から街が見えたから海のことなど忘れていった


弟が私にいないそのことで別に泣いたり死んだりしない


殺人が起きたら僕を疑って気づいてもらえなくても歌う


想像で友人は泣く妄想で恋人が死ぬ呪文のように


道徳や倫理を超えてしまったらそこから壊れた恋を疑え


忘れてくように何度も思い出す 合鍵はそのポケットの中


手に釘が刺さったままで泳いだら 盗聴される懺悔室から


歌や詩がわたしの中にあることを不可解な性の問いかけとして


鏡には映らなかった月光にあるいは溶け出す床の模様に


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冷え切った水をそれでも掬ったら 答え合わせのようだね 四月


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コートにはそれぞれの袖 それぞれの腕を通して何故か悲しい


繰り返す惰性のような毎日にやり過ごすだけ復唱してる


欠陥があること自体褒められたことじゃないけど誇って見せた


アイ・ミス・ユー 頭の中にいる君はどんな風にも歳を重ねて


祝祭に 春を着飾る抒情すら無力だなんて言えばよかった


花びらに、私の胸に、想像に、願っていれば無色のままで


応答を 夕立は上がる 這い出せば間に合う距離を用意している

 

果たせるか 陶酔してる僕は今ベッドルームに散り積もる花


僕の花 火花は散って懐かしい季節が終える気配がしてる


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春の雨 あるいはただの感傷を抱きしめるように四月は終わる


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